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「みかん援農」は、全国の若者と和歌山県下津町のみかん農家をつなぐプロジェクト。繁忙期となる毎年冬にアルバイトを募集し、滞在場所となるシェアハウスを紹介するなど、人手不足の農家さんをサポートするため、援農者さんのお世話係を買って出ています。
2024年の援農者数は過去最多! 100名の応募から日程や条件のマッチングを経て、76名の援農者さんが参加となり、40戸の農家さんのもとでお手伝いをしてくれました。
援農者さんの思いを知るため「どうして参加したの?」や「援農してみてどう?」など、同年12月下旬に3組の農園を訪れてインタビューをしました。1組目は「坂口農園」の援農者である小島 咲耶さん、高橋 光さん、松田 大夢さんです。
「北海道から来ました」と話すのは、咲耶さん20歳。2024年の最年少援農者です。普段は北海道の農企業に勤めていますが、冬は積雪により農業が閑散期に入るため、その期間を活かして「みかん援農」に初参加したといいます。
咲耶さん:会社でブロッコリーやトウモロコシとかの野菜を育てたり、高校の頃にインターンで牛や鶏のお世話をしたことはあったんですけど、果実の栽培に関わった経験がなくて。いつかやってみたいなと思って探していたところ「みかん援農」を見つけました。
「みかん援農」に参加してみて、どうですか?
咲耶さん:北海道とはまた違った自然の豊かさがあって楽しいです。北海道より気温が暖かいし、農家の皆さんが優しくて、集中して仕事ができるから、とてもいい環境だなと思っています。果実の栽培の現場を知ることができて嬉しいし、将来は雪かきの要らない県に住みたいと思っているので「和歌山っていいかも」なんて思いはじめています。
和歌山であれば高野山にでも登らない限り、雪かきとは無縁ですもんね。シェアハウスは女性2名で滞在中ですが、ぜひシェアハウスの感想も聞かせてください。
咲耶さん:私は料理をするのが好きなので、ルームメイトと分担しながら一緒に自炊するのが楽しいです。あとは、掃除好きってほどじゃなかったんですけど「お借りしている家だから綺麗に使わなきゃ」と掃除の意欲まで湧くようになりました。
光さんは、アパレル業を自ら展開しようと努める40歳。東京や和歌山などに出店しているアパレルショップに勤めていましたが、2023年の秋に退職。「みかん援農」に参加した友人のSNSをきっかけに同年に初参加し、2024年も本業のかたわら参加しています。
遠方からの参加者が多い「みかん援農」は、シェアハウスの利用がほとんど。ですが、光さんは隣町の和歌山市に住んでいるため、自宅通勤というレアケースです。
光さん:和歌山はみかんが有名ですよね。だけど、私は和歌山に暮らしているのにみかんの生産現場に関わったことがなくて。前の職場を辞めると同時に「やったことのないことをやってみたい」と思っていたので応募しました。
「みかん援農」を体験して、どうでしたか?
光さん:みかんの木々に埋もれて鳥のさえずりを聞きながら収穫する、この環境がすごくいい! なにより坂口家がとっても優しくて。「来年もまた来てね」と言ってくれたので、2年連続で来ちゃいました。毎年違う顔ぶれの参加者に出会えるのも楽しいです。
1年目の援農を終えたあとも農家さんとの関係性が続き、光さんが和歌山市で1週間限定のポップアップストアを開いた際は、坂口家総出で遊びに来てくれたそうです。
光さんは、みかんの収穫を通じて農家さんとの絆が深まるにつれて、本業であるアパレルの観点からも農業を盛り上げたいと考えるようになったと話します。
光さん:人間は絶対に服を着る生き物。たとえ作業着であっても毎日着るものだから、「今日はこれを着ようかな」「こんなカラーを取り入れてみようかな」と日常にちょっと彩りを加える役割にできたらいいなって。これから農業はきっと若者が増えていくから、いかに農業の現場を楽しくできるかが、より大事になると思います。
「大トリはひろむで決まりやね!」と坂口農園の代表・坂口 正起さんが満面の笑みで太鼓判を押したのは、群馬県から訪れた松田 大夢さん29歳。なんと、海の遊牧民「バジャウ族」と共に、フィリピンのセブ島沖で7年間も海上生活をした経験があるのだとか!
先に参加していた友人たちの勧めで「みかん援農」を知った大夢さん。近々、大きな挑戦があるため、体力づくりと生活リズムを整える目的で「みかん援農」に初参加したそうです。
大夢さん:メンタルとフィジカルを整えるのにちょうどいいなと思って。普段と違う環境に身を置いて、早寝早起きをして、瞑想するように収穫に没頭する。みかんの運搬作業は肉体強化にぴったり。僕にとっては、バイトという名目のリトリートですね。
20代の大半を海の上で過ごした大夢さんですが、実は農業の経験者。高校時代は祖母が営むりんご農園を手伝い、普段は群馬県で自給自足をしているそうです。
大夢さん:「みかん援農」って、めちゃくちゃいいシステムですよね。ただ雇い雇われる関係じゃなくて、持ちつ持たれつで、人と人として共同作業してる。参加者も農家さんも互いにそのことを理解しているから、気持ちよく過ごせていて、すごいです。
滞在場所は、男性5名でのシェアハウス。フィリピンでも共同生活を送っていた大夢さんにとって、海外経験が豊富な個性派のルームメイトが揃う今のシェアハウスは、当時に通ずる懐かしさや居心地のよさがあるといいます。
大夢さん:特にルールを決めているわけじゃないんですけど、好きなことや得意なことを互いに持ち寄ったりして楽しく過ごしています。ユートピアになりつつありますね。
最後に、坂口農園を運営する坂口 正起さんにも感想を伺いました。
かつては親戚や友人の協力のもと繁忙期を乗り越えていた坂口農園さん。地域の高齢化により人手不足が課題となったことから「みかん援農」を活用しています。受け入れ農家として初年度から関わり、もう10年近いご縁です。
正起さん:援農で来てくれる人たちみんな気さくやし、毎年会えるんが楽しみになって。きっと農家だけで求人してたら、不満や愚痴のはけ口がなくて関係性のバランスを保つのが難しいやろうけど、「みかん援農」は大谷くんが農家と援農者の間をうまく取り持ってくれてる。そのおかげで、いい関係が続いてるんやろうなって常々思うね。
援農者の滞在期間は、1ヶ月以上が基本。作業の開始日や終了日はそれぞれの事情や希望に応じているため、各自で異なります。そのため、その年の最後の1玉を取り終えるゴールの瞬間に援農者全員が立ち会えるわけではありません。
正起さん:先に終了日を迎える子たちが「ゴールの感動を一緒に味わいたかったです!」と言って、去るのを惜しんでくれることがよくあるんやけど、そういう気持ちの芽生えがすごく嬉しい。僕らにとっても、援農で来てくれた子たちとの思い出がいっぱいある分、最後は巣立っていく娘や息子を見送るような気分やね。
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