JOURNAL|Case: Sasagu & Akane & Nina
冬の収穫期は、みかん農家にとって一番の繁忙期。だけど、少子高齢化から人手が足らない。かといって、ただでさえ多忙な時期に自力で人手と宿を確保するのは難しい…。
そこで、2017年にはじまったプロジェクトが「みかん援農」です。人材の募集から、勤務先となる農園とのマッチング、シェアハウスの手配までを一手に引き受けています。
援農者の思いを知るため、2024年12月下旬に3組の農園でインタビューをしました。3組目は「冷水農園」の援農者である久住 献さん、長尾 茜さん、コルジョン・ニーナさんです。
「僕は広島出身の日本人なんですけど、普段はフィリピンでWEBデザイナーをしています」と話すのは、献さん31歳。どういった経緯で「みかん援農」に参加したのでしょう?
献さん:フリーランスで世界中をめぐって、次の滞在先はオーストラリアを予定しているんです。ワーキングホリデーの制度を使って畑仕事もやってみたいなと思っていたときに、「みかん援農」に参加した友だちから「面白いよ!」と教えてもらって。ちょうど一時帰国のタイミングと重なっていたから、まず日本で農業を経験しようと考えました。
これまでデスクワークばかりだったため、体を動かす仕事に携わったのは、社会人生活で初めて。「すごく新鮮で楽しいです」と献さんは声を弾ませます。
献さん:高校時代は部活で農業部に所属していたんですけど、ここまで本格的に農業に関わったことがなくて。天候を見ながら作業を進めたり、夜露で実が傷まないように1つずつ水分を拭き取ったり、みかんってこんなに丁寧に育てられているんだ!と驚きました。
どこまでも続く青空のもと、みかんに真摯に向き合う農家さんの隣で励む農作業。普段とは異なる脳や筋力が刺激されるため、心身のリフレッシュとして定期的に援農に参加するのはありかも?と献さんは考えはじめているそうです。
シェアハウスは男性5名での共同生活ですが、その暮らしはいかがですか?
献さん:ここまで仕事と生活を共にするシェアハウスって、社会人ではなかなか経験できない。援農という共通点があるから、出勤時間や帰宅時間もだいたい同じ。みんなで食材を割り勘して晩ごはんをつくって食べたりしているうちに、初対面だったはずのルームメイトも10年来の知り合いみたいになって楽しいです。すごく貴重な機会だなと思います。
さらに、シェアハウスの垣根を越え、援農者で集まって飲み語らうこともあるようです。
茜さんは、神奈川県から参加した28歳。「みかん援農」2年目のリピーターです。前職の看護師を退職して以来、日本各地をめぐって季節就労のアルバイトをしています。
茜さん:看護師も人と関わる仕事でしたけど、広々とした自然に癒されながら農家さんやいろんな人たちに出会える援農は、特別な経験ですね。それに、人手の足りない農家さんのお役に立てたら嬉しいですし。友だちから「みかん援農」のことを教えてもらって、昨年参加したんです。たくさん良い出会いや経験があったから、今年も応募しました。
「みかん援農」を経験していかがでしたか?
茜さん:みかんづくりの苦労を全然知らなかった!と思い知らされました。それまではみかんを気軽に食べていたから、農家さんのこだわりや大変さを目の当たりにして驚きました。仕事のスタートは早朝7時。そうなると就寝は10時頃になるから、必然的に健康的な生活になる。おかげで心も体も心地のいいバランスを保てている気がします。
「ひとりだと生活習慣ってなかなかよくできないから」と茜さん。規則正しい仕事を通じて仕事仲間と共に、無理なく生活習慣を整えられることがありがたいと話します。早朝から仕事をはじめるため、休憩時間には農家さんと並んで木陰でお昼寝することも。
茜さんは和歌山に来る直前、沖縄の石垣島に滞在し、髪染めの原料となる植物のヘナとインディゴを栽培する農園で約2週間の季節就労をしていました。その石垣島の職場で出会ったのが、フランス人のコルジョン・ニーナさん24歳です。
ニーナさんはワーキングホリデーの制度を活用して、約半年前から日本で暮らしています。茜さんから「私は次、みかんの収穫で和歌山に行くんだけど、一緒にどう?」と誘いを受けて、ニーナさんも「みかん援農」に参加。2人でシェアハウスに滞在しています。
ニーナさん:私は自然のなかで体を動かすことが大好きです。だから、フランスにいるときも、りんごやぶどうの収穫など、季節ごとにさまざまな農作業をしていました。日本でもファームで働いてみたいと思いました。みかんもハサミも、丸くて可愛いです。
「みかん援農」は、基本的に雨の日がお休みです。ただし、各農家さんが作業の進み具合をふまえて休業日を決定するため、勤務先によって判断が多少異なります。
茜さんとニーナさんは、勤務先もシェアハウスも同じ。一方が残業を希望しない限り、お休みの日が揃うため、2人ときどき援農仲間も加わって、和歌山県内の観光スポットや温泉めぐりをよくしているのだとか。
ニーナさん:温泉が好きです。日本の料理も好きです。この前食べた「みかんの大福」も美味しかったです。この町に来て、和歌山のことが好きになりました。
インタビュー中、ふと振り返ると、援農者の言葉に顔をほころばせる冷水農園さんの姿がありました。春・夏・秋…と農家さんが日々愛情を込めて育て上げたみかんを世に送り出す、集大成となる冬。豊かな自然のもと、あなたもぜひ一緒に収穫しませんか?
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