JOURNAL|Case: Rico Asatsu & Asaka Matsushita
冬季限定シェアハウス住み込み型のバイト「みかん援農」。日本各地から多彩なバックグラウンドの若者たちが集まり、今では応募数は毎年70名を超えるようになりました。
援農に関わってくれている農家さんと援農者さん、双方に取材をするこのインタビュー。2組目は、2022年の援農者である浅津 梨子さんと松下 麻佳さんを取材しました。二人とも、東京・大阪といった都会からローカルの暮らしに関心が向き、援農の参加をきっかけに移住や就職をして新たなライフステージに進んだ、いわゆる援農卒業生です。
「みかん援農」では毎年、現役・卒業生を招待した交流会を開催しているのですが、2023年は12月5日にカフェKAMOGOで開催しました。当日の準備に協力してくれた料理上手な二人に、援農参加から1年が経った近況や、当時の援農・シェアハウスの感想、未来の援農者へのメッセージを伺いました。
梨子さん:1994年生まれ、千葉出身です。今年の6月に東京から和歌山に引っ越しました。これまでいろんな仕事をしてきたんですけど、移住するタイミングで心機一転! プロダクトのプロモーションの業務委託を受けたり、オンラインのデザインスクールのコーチ、和歌山のゲストハウスや飲食店で働いたりと、新しい仕事を一気にはじめました。
麻佳さん:私は1995年生まれで、大阪出身。全国をめぐった後、思い描いていた働き方とぴったりの会社が大阪で見つかって、今年の10月に就職して、また大阪で暮らしています。キッチンカーのコンテンツを自分で企画・運営するといった仕事で、「旅するお結び屋さん」をしようと準備しているんです。これまでお世話になった農家さんや産地の食材を用いてローカルの良さを発信する、人と人を結ぶおむすびを提供できたらなって。
梨子さん:福井県鯖江市に面白いシェアハウスがあるんですけど、そこに住む友人がFacebookで「『みかん援農』いいよ」って投稿したのを見かけたのがきっかけです。私は長年東京に住んでいて、最初は死ぬまで東京かなと思ってたんですけど、30歳手前で東京以外もちょっと見てみようかなって思って。島根県の隠岐の島で暮らしたり、大阪や金沢とかいろいろ住んだりして。友人のその口コミをきっかけに最終的に和歌山へ。
来てみたら、めちゃ楽しかったんですよ。援農もですけど、まず和歌山は住むのに適していて。人との距離感がちょうどいい、温泉がいっぱいある、何よりメシがうまい!食べることが人生の最優先事項な私にとって、めちゃぴったりな土地だって感じましたね。
麻佳さん:私のきっかけは、大阪にいる知り合いのトマト農家さんです。その人は、毎年トマトの閑散期に「みかん援農」に参加していて、「面白い人がいっぱいおるから来たら?」と教えてもらって。ちょうど私は前職の広告会社を辞めて、田舎で事業を立ち上げた先輩を手伝って、田舎にちょろっと興味を持ちはじめていた頃でした。
大阪出身やから田舎の故郷とかもなくて。だから、地元のおじいちゃんやおばあちゃんと関係をつくりながら、田舎の良さを近くで知れるなんていいなって。以前は週末にキャンプとか行ってたんですけど、つくられた非日常じゃなくて、もっと生きた日常として地域に触れる暮らしを体験したかったんです。「みかん援農」ならシェアハウスだから疎外感もなさそうだし、もう行くしかないなと思いました。
梨子さん:農家さんって職人気質で保守的な人が多いのかなと想像していたんですけど、実際はオープンで喋りやすくて朗らかな人ばかり。援農に来る人は自由な若者が多いじゃないですか。他の地方では新しいことに反対する地元の人も結構いたんですけど、ここでは「そういう生き方もいいね」と快く受け入れてくれる人が多いです。
援農でお世話になった農家さんに、和歌山へ引っ越したって伝えた時も「めちゃ嬉しい!ありがとう!」って喜んでくれて。こういうところが好きだなって改めて思いました。
麻佳さん:農家さんはみんな家族経営なので、奥さんからおじいちゃん・おばあちゃんまでいて、毎年繁忙期に手伝いに来ている地元の人もいて。作業の合間のお菓子タイムは、みんな青空の下でコーヒーを飲みながら他愛もない話をして。なんだか一つの家族みたいで嬉しかったです。作業中も丘の上から海と山が見えて、海の青と山の緑にみかんのオレンジ色が映えて景色がめっちゃ綺麗で、ずっと癒されながら過ごしていました。
地元の人たちにとっては当たり前の日常やけど、こっちにとってはどれも新鮮で面白い。現地に来てみて、産地に直接携われることもやりがいでした。田舎には都会みたいな娯楽はないけど、そういうのがないからこそ楽しい。あっという間の滞在でしたね。
梨子さん:私は10人くらいが住む大規模なシェアハウスで、めっちゃ面白かったです。「みかん援農」には妹と参加してました。普段の食事はおのおの自炊ですけど、ある日、食材を持ち寄ってみんなで鍋しようってなって。出会って間もないルームメイトの男の子が、鍋の素とウインナーの香薫2袋を出してくれて。あの美味しい香薫ですよ? 私も妹も食に対する優先度が高いので「なんて心の広い人なんだ!」と揃って感動しましたね。
麻佳さん:私は隣駅の冷水浦っていう集落にある女子4人の一軒家でした。梨子ちゃんのシェアハウスとうちのシェアハウス、両方にリピーターがいたからつながりがあって、みんな頻繁に行き来していて。20-30代が多くて同世代というのもあって、梨子ちゃんやみんなとすぐ仲良くなりました。そのうち私は、梨子ちゃん側のシェアハウスに住む男の子と付き合うことになって。みかんLOVEです(笑)
農家さんが「今日は大根持って帰りな」って家庭栽培の野菜を分けてくれることもあって、その食材でシェアハウスの女4人で晩御飯や次の日のお弁当をつくったり、雨の日は援農が休みになるからテレビ見ながらコタツに入って「出られへん〜」って言い合いながらダラダラしたり。4人姉妹になったみたいでむっちゃ楽しかったですね。
梨子さん:そうそう、休みの日にそれぞれ持ってきた本を読んだり、何冊か持ってる人が貸してくれたり、シェアハウスの中でのんびり過ごす時間も豊かだったな。午後から晴れたら、行きたい人を募って温泉に行ったりして。夜にサッカーのワールドカップの観戦をしたのも楽しかったな。めちゃ和気藹々してましたね。
シェアハウスのみんな、出身地とか今までしてきたことがばらばらで、バックグラウンドの異なる人たちと話せたのも面白かったです。東京で暮らしていた頃も同じようにシェアハウスに住んでいたんですけど、こっちだと「みかん援農」っていう一つの経験が全員に共通しているから、仲間って感覚が強くて、なおさら楽しかったです。
農家さんとのやりとりも、シェアハウスでの思い出も全部、めちゃよかった。なにより、主宰の大谷さんが最高ですね。ビッグダディみたいな存在で安心感があって。
麻佳さん:私も同感!大谷さん最高です!
梨子さん:援農に参加するまで、私は東京至上主義!みたいなところがあったんです。他の地域をめぐっていた時は、地方に行くほど娯楽が少ないし「やっぱり東京かな」と思っていたんですけど、和歌山に来てから変わりましたね。
今まで面白い人は東京にいると思ってたんですけど、それは違ってた。和歌山には豊かで面白い人がたくさんいる。好きなことを突き詰めて、無意識に永続してる、みたいな人が多くて。そういう生き方がかっこいいって思ったのが移住の決め手かもしれません。
そういう人たちとつながるきっかけになったのが「みかん援農」だし、それを企画している大谷さんのおかげです。最初にKAMOGOに着いた時点で「え!めっちゃイケてるじゃん。こんなとこあるんだ!」って思ったし、大谷さんに出会って考え方が変わりました。
麻佳さん:私は援農に参加して、やりたいことが広がりました。広告会社を辞める頃は「新しいことをはじめるなら明確な目標とか人生の軸を持たないとだめかな」って考えたこともあったんですけど、いざ援農に参加してみたら、いろんな選択肢をもらえたんです。ルームメイトに「みかんの次、どこ行くん?」って聞いたら「まだ決めてない」とか「海外行くためにお金貯めてる」「沖縄でジャガイモの収穫に行く」とか。自分の進む先がまだ決まってなかったから、いろんな選択肢から刺激をもらうことができました。
おかげで和歌山の後は、日本中をめぐりましたね。沖縄のゲストハウスを旅したり、北海道でゲストハウスのスタッフしたり、香川でリゾートバイトして。山形では長期滞在して、さくらんぼやラフランスを育てる農家さんや無農薬の米農家さんをお手伝いもしたり。ほんまに「みかん援農」をきっかけに、人生が面白くなっていきました。そのうち自分の軸みたいなものが見えてきて、今の仕事につながった感じです。
梨子さん:私は大学時代、留学したりバックパックで旅したり、在学期間の半分くらいはずっと海外に行ってて。援農をきっかけに和歌山に移住して仕事もいろいろはじめたから今年の参加は難しかったけど、もし大学生の頃に「みかん援農」を知っていたら、もっと何回も来てたのにって思うんです。
インドを旅するより価値観が変わるなって。在学中とか卒業後に何したらいいか迷う時とかに「みかん援農」に参加したら、きっといろいろ見つかるんじゃないかな。
麻佳さん:うんうん、一回援農に来てみれば、そこからやりたいことが広がるはず。人の意見を聞く姿勢さえ持てば、いろんな選択肢や知らない世界にいっぱい出会えて、面白い価値観が広がるなって思います。「何か新しいことしたいな」ってふわっとした気持ちで構わない。とりあえずお金貯めるぞ!ってくらいのスタンスでも全然いいよね。
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