蜜柑援農

JOURNAL / 「日常に“ありがとう”が増えた」 シェアハウスに同居する援農女子

JOURNAL|Case: Nagisa & Masami & Namiko

「日常に“ありがとう”が増えた」 シェアハウスに同居する援農女子

普段の居住地や暮らしぶり、援農に参加した理由も違う若者たちが集う「みかん援農」。約1〜2カ月間の援農期間中は、ほぼ初対面の顔ぶれでシェアハウス生活を送ります。

援農に関わってくれている農家さんと援農者さん、双方に取材をするこのインタビュー。3組目は、2023年12月の援農真っ只中、一軒家の古民家シェアハウスに同居して約1カ月が経つ佐藤 渚さん・西 麻奈美さん・小村 菜弥子さんにお話を伺いました。

「なぎちゃん」「まぁちゃん」「なみさん・こむたん」の愛称でお互いフラットに言葉を掛け合い、もしかしてずっと前から一緒に暮らしていたのでは…?と勘違いしそうになるほど、仲良し姉妹のような微笑ましい関係性の3名です。


ー 年齢やこれまでしてきたこともバラバラだと思うので、自己紹介からぜひ。

渚さん:今24歳で埼玉から来ました。援農ははじめての参加です。2024年の夏にJICAの青年海外協力隊でネパールに行って現地の人たちに果樹栽培を教える予定なんです。その勉強のために、2023年7月から下津町の農家さんにお世話になっていて、11月から「みかん援農」に合流して、このシェアハウスでの暮らしがはじまりました。

小学校の頃にテレビで観た協力隊の姿がずっと頭に残っていて、高校で進路について真剣に考える時に、やっぱりそのイメージが浮かんで。栄養関係の仕事にも興味があったので、栄養の根本にあるのは一次産業だなって考えにたどりついたんです。それで、協力隊を目指せる大学に進学して、農作物に関わる分野で携わることになりました。

麻奈美さん:私はもうすぐ31歳で、神戸から来てます。「みかん援農」の参加は3回目。普段の職業を尋ねられたら、いつもフリーターとかニートって答えてるかな。やりたいことをやって、お金を貯めて、また出かけて、みたいな感じなので。

ここに来る前は神戸の区役所でマイナポイントの登録の案内係をしてました。他には、ワクチン接種会場での案内係とか、宮古島や志賀高原でのリゾートバイトとか。一昨年は貯めたお金で、1カ月間ヨーロッパを旅したり、車で東北一周をしたりしてました。

菜弥子さん:私は36歳で、大阪から来ました。農業自体、人生初です。学生時代から、自分が会社に勤めてOLをしてるイメージが全く思い描けなくて。それ以外のことをして生きていくんだろうなとずっと思ってました。

介護士だったり、お菓子売り場の販売員だったり、直近は和歌山県南部の串本にあるリゾートバイトでレストランのホールをしてました。どれも共通してるのは、人と接する仕事っていう点ですかね。介護士は人の日常生活にかなり深く寄り添う仕事ですけど、お菓子売り場でも、のしをつくる時に「孫が産まれてね」とか、そういう話が聞けて。ホールでも遠方から来たお客さんと会話ができたり。そういう時間が好きなんです。

ー 「みかん援農」に参加したきっかけは何ですか?

渚さん:「みかん援農」に毎年参加しているリピーターが友だちにいて、その子が「農業について学びたいならこういうのがあるよ」って紹介してくれました。

麻奈美さん:インスタで「みかん援農」に参加した友だちの投稿を見て、楽しそうやなぁって思ったのがきっかけです。4年前にはじめて参加して、それ以来、毎年来ていて。でも、あちこち旅してやりたいことをやったから一旦落ち着こうと思って、去年は企業で正社員として働いていたので、援農に参加できなかったんですよ。

その時に改めて「やっぱり今年も援農に行きたかったな」って心底思って。私にとってこの環境で仕事することって大事なんやって気付かされました。もう「仕事」っていうより「自分にとって大切な人や場所に会いにいく」感覚なんやなって。

菜弥子さん:私の場合、知り合いに援農経験者がいなかったから、ネットで調べて「みかん援農」の情報にたどりつきました。何らかの農作業に携わってみたかったからっていう動機です。私は食べることがすごく好きなんですけど、農業とは離れた環境で育って、一次産業のことがよくわからず生きてきました。だから、どうやって食べ物ができて流通していくか、その最初の段階を一度体験してみたいなとずっと思っていたんです。

農業体験について検索すると、キノコとか柿とか全国のいろんな援農が見つかりました。そこから最終的に「みかん援農」を選んだのは、窓口になっている大谷さんの存在があったから。はじめての出来事に一人で飛び込むのって勇気がいる。「みかん援農」は、大谷さんが農家さんと援農者との間に立って窓口になってくれるので、その安心感が大きかったですね。援農者も多そうで、いろんな価値観に出会えそうな期待感もありました。

ー 「みかん援農」に参加した感想を教えてください。

渚さん:想像以上に楽しくて、また帰ってきたいと思える場所がひとつできたなぁって、すでに思ってます。農家さんとのやりとりには、都会ではなかなか味わえない人の温もりがあって、地元のおじいちゃんやおばあちゃんが迎え入れてくれるのが嬉しいです。

麻奈美さん:むっちゃ楽しい! 参加する度に楽しさが増してます。最初の年は初対面やからお互いどこか気を遣ってたけど、年々心の距離が縮んで冗談も言い合えるようになって。今では「おかえり〜!」みたいなホーム感で迎えてくれるし、「この1年はどんなふうに過ごしてたん?」って会話が、お正月の親戚の集まりみたいであったかくて。

菜弥子さん:援農をやる前は、農業は体力を使いそうなイメージがあったし、公式サイトに「基本的には晴天が出勤、雨天が休み」と記載があったからお天気次第でもあるし、私の体力でいけるのか少し不安だったんです。だけど、実際やってみたら大丈夫でした。

ずっと屋外で体を動かしているから、そりゃ疲れる。でも、出会った農家さんや援農の子たちもいい人ばかりで、人間関係で気疲れすることはなくて。精神的疲労じゃなくて単純な肉体的疲労だから、寝ればすぐ回復できる。思ったより楽しくやれてますね。

ー このシェアハウスでの暮らしはどうですか?

渚さん:人生初のシェアハウスだから最初は心配してたんですけど、ここに来てから「ありがとう」って言葉をよく口にするようになりました。普段の暮らしとは違う顔ぶれで、一緒にごはんを食べて家族みたいに過ごすのが楽しくて、ここにいるとホッとします。

麻奈美さん:そうそう、ここに来てから私も「ありがとう」ってよく言うようになった。みんな「こちらこそ〜!」って陽気に返事するのも定番になってるよね(笑)

このシェアハウスは人数が少ないから、洗濯物を一緒に回して、食事も一緒にすることが多いんです。最初にそうしようって決めたわけじゃなくて、お弁当のおかずが多めにできたから「二人のお弁当箱にも入れとくね」とか、洗濯物が自分の番でちょうどいっぱいになったら「このタイミングで回しとくよ」とか声をかけあって、お互い「ついでに」と自主的にやりはじめたことが習慣になって、今の支え合いの関係ができました。

渚さん:シェアハウスが同じでも、勤務先の農園が違ったり、農園が同じでも残業がある日が違ったり、作業の進み具合では晴れの日でもお休みになることもあって。だから早く帰った人がみんなの晩ご飯の支度をして、お風呂から出た頃に揃うって感じですね。

菜弥子さん:私が援農に参加してすぐの頃、連日お天気に恵まれて、連勤で体力的に疲れ果てて、帰宅後は何もする気が起きずにいたら、なぎちゃんとまぁちゃんが私の分まで朝ごはんも晩ご飯もつくってくれていたんです。もう本当に感謝しかないですよ。

麻奈美さん:言ってみれば「無理しない」が私たちのルールだから。その時にできる人ができることをやったらいい。もちろんお互い、ある程度の気遣いもあります。早めに寝たい人がいたら静かにしよう、ご飯をつくってもらったら洗い物をしようとか。大事なのは、誰かだけが無理をする状況をつくらないこと。例えば、みんな時間がない朝があれば、食器を洗うのは帰ってから!今は置きっぱなしでよし!って具合です。

菜弥子さん:農家さんとのやりとりも楽しいけど、私にとってこのシェアハウスで過ごす日常の楽しさはかなり大切だと思っています。大変な時に支えてくれて「ありがとう」って心から思う。自分に余裕ができたら、次は私が支えようって自然に行動できる。

渚さん:本当そう。いつも「ありがとう」って素直に思って言葉になる。

麻奈美さん:うちらマジで家族みたいで、全員で住み続けたいくらいよな。

菜弥子さん:だから、最終日を迎えるのが寂し過ぎて、考えたくないんよね。

ー 援農とシェアハウスを体験して、自分の中で何か変化はありましたか?

渚さん:めっちゃあります。一言で言えば、生きやすくなりました。今まで人に甘えたり頼ったりするのが苦手だったんですけど、みんなが受け入れてくれるおかげで、等身大の自分を出せるようになりました。あと、いろんな価値観を持った援農者と出会えるので、今まで以上に他人を受け入れられるようになったのも大きな変化ですね。

麻奈美さん:私は今まで一人の時間が絶対必要なタイプだったんです。でも、このシェアハウスにいると一人の時間が勿体なく感じるようになりました。ここでは畳の部屋を襖で区切って個室にするんですけど、起きてる間はずっと襖を閉めたくないくらい、このメンバーで過ごす時間が心地よくて。一人の時に読もうと思って持ってきた本も全然読み進められない。みんなと話す方が楽しくて。これは私にとって快挙です。

菜弥子さん:私もまぁちゃんと同じで、誰かとずっと一緒にいるとしんどくなるタイプだったんですけど、今は自分から進んでみんなと過ごそうとする時間が圧倒的に長くて。私史上最高に居心地よく過ごせて、そういう自分の中の変化が嬉しいです。

あと、私がこの援農で関わった人たちは「常識に囚われず、自分の人生を生きます」みたいな人ばかりで。誰でも人生で一度は「自分はこのままでいいんだろうか」と迷うことがあると思うんです。そういう時の判断って「他の人たちがそうしているから」と常識に引っ張られがちだけど、ここで出会った人たちは「どうしたら自分らしく生きられるか」に強い関心があって軸がブレない。その姿がすごく刺激になりました。

ー 最後に、援農に参加しようと考えている方々へ、メッセージをお願いします!

麻奈美さん:少しでも気になるんやったら来た方がいい! 朝から夕方まで太陽のもとで体を動かして、農家さんやシェアハウスのみんなと笑って過ごせて、すごく健康的やし。普通の会社におったら出会えない人たちとのコミュニケーションがむっちゃ楽しい。

参加する前からあれこれ心配して来ないより、来てみて面白くなかったら帰ったらいいだけやから。って言い方したら、大谷さんにオイオイってつっこまれるか(笑)

渚さん:あはは、まぁちゃんらしいね。うん、私も素直に「おいでよ!楽しいよ!」って伝えたい。ここに来てから、些細な日常の中にある幸せの粒をたくさん見つけられるようになった気がする。「ありがとう」の数と同じくらい、毎日ことあるごとにシェアハウスのみんなで「幸せ〜」って言い合ってるよね。この感覚は人生の糧になると思うなぁ。

菜弥子さん:そうだね。農業から遠い生活をしている人ほど、人生の中で少なくとも一度はこういう1-2カ月を経験してみるのは、すごくいいんじゃないかって私も思う。

誰もが日々どこかで食べて暮らしてる。一次産業の現場を知ることで、食べ物の価値がよりよくわかるし、正しく意識が向くようになると思うんです。私の場合は「ながら食べ」をすることがなくなったし。将来農業したいかどうかにかかわらず、援農後に会社員に戻るにしても何にしても、ここで得た経験から人生に厚みが出る気がしますね。

Thanks for photos:Shogo Hara

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